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高知県昭和期小説名作集10 田宮虎彦
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田宮虎彦著
四六判 475頁 1994年9月刊 定価2,854円 |
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| 足摺岬/霧の中/異母兄弟/菊坂/繪本/物語の中/落城/前夜/末期の水/菊の壽命/槍澤市左衛門の最期/暴力/梟首/落人/落城聞書 | |
| 「足摺岬」 不運で救われないと絶望した帝大生が断崖絶壁の足摺岬に向かう途中で宿屋に転がり込む。宿屋の主人や娘、宿屋に居着いた老遍路など同宿の温かい人情に触れるうちに立ち直っていく。 昭和29年、吉村公三郎監督が映画化、話題になった。 「繪本」 父にうとまれつつ苦学する大学生の主人公に、「赤」の嫌疑をかけられて縊死する新聞配達の中学生や、カリエスを病む清純な少年の姿を配し、国家権力の暴圧と貧困という二重の圧迫のもとで、必死に生き続ける無力な一青年の姿を描きだしている。 |
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出身 明治44年8月5日東京で生まれ、後、高知市の祖父の家に帰る。 船員であった父の勤めの関係で、幼年期は下関、姫路などを転々とする。この父との葛藤は、作家としての彼に大きな意味をもち、「足摺岬」など多くの作品に影を落とす。神戸一中、三高を経て、昭和8年東大国文科に入学。『帝国大学新聞』の編集に参加したり、森本薫、小西克巳らと同人雑誌『部屋』を出す。この雑誌の同人だった、高見順、新田潤らとの交流は、彼の考え方や進路に大きな影響を与えた。 また、この頃より、武田麟太郎や、丹羽文雄の知遇も得た。 昭和11年東大を卒業。武田氏が主宰する『人民文庫』の創刊に際して執筆メンバーに加わり、また、『都新聞』に入社するが、のち退社、以後は、職を変えながら、戦時下の重圧と、持病の結核に耐えつつ執筆を続ける。 |
![]() 巻頭写真 |
| 全12巻・定価 各巻2,854円・四六判・上製本 文学は一時代の社会や風俗、思潮を描きだすものであるとともに、時代を超えて流れる伝統や文化に深く根ざした営みでもあります。高知新聞創刊90周年の企画、『高知県昭和期小説名作集』全12巻は、高知の歴史を顧み未来を志向するうえで、有効な手だてとなりうると考えます。本企画の概要は、昭和の日本文壇を彩った土佐出身作家(故人)の代表作、土佐を描いた郷愁あふれる小説を一堂に紹介するもので、高知県初の文学全集です。 この全集の大きな特色の一つとして「貴重な文学史資料」があります。名作家の新しい情報を加えたプロフィール、作品解説、略年譜を収載したばかりではなく、口絵写真や月報を通じて土佐発信にふさわしい資料の提供に努めました。写真では、田宮虎彦の誕生時、少年時代に高知港桟橋で撮ったもの、ふるさと大方町浮鞭を訪れたタカクラ・テル、モスクワで大原富枝氏らと一緒の田村泰次郎などの珍しい写真もあります。 編集委員諸氏によって選ばれた作家は、田中貢太郎から田中英光まで10人。今日では入手の困難な作品がほとんどです。これらは読者の長年の渇望に応えるものであり、<心の時代>といわれるいま、12巻の文学的果実は、私たちに豊富な滋養をもたらしてくれるものと信じます。 明治以来百年余にわたって、高知ほど優れた文学者を輩出した土地は少ないといわれます。ここに取り上げた10人のほかにも、郷土の生んだ日本的文学者は数多く、本名作集では物故した小説家に限りました。他日を期したいと思います。<地方の時代>ともいわれる現在、この『高知県昭和期小説名作集』が、高知からの情報発信の一つになっていくようにと願っています。 ■編集委員 |